心のネジを巻く日記

発達障害児の子育てと日常を綴るブログです

貧困女子高生にまつわる誤解|NHK『ニュース7』を観ていて感じたこと

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少し前の話になりますが、母子家庭で育つ女子高生がNHK『ニュース7』の貧困問題を扱うVTR中で紹介されたことがきっかけで、すごくバッシングを受ける騒ぎがありましたよね。

彼女の家の周辺では、今でも見知らぬ人間がうろついていたり、嫌がらせの手紙が届いたりと、騒動の余波は続いているようです。

そもそも自分のことを『貧困だ』なんて言っていなかったのに

この時の『ニュース7』、私も実は観ていて、彼女が紹介されたVTRのことは今でもはっきり覚えています。

私は基本的にネット上の罵詈雑言には触れないようにしているので、彼女がどういった経緯で批判を受けてしまったのかは新聞やニュースサイトの情報しか知りません。

おそらく「貧困で生活が困窮しています」と言っておきながら、結構贅沢してるじゃねーか!っていう、そういった批判的な意見が多くて炎上したのだろうと感じています。

それでですね、まずはっきりと言えるのは、彼女は自分のことを「貧困だ」なんて一言も言っていなかったんです。

彼女は、以前学校でパソコンの操作を習う授業があり、みんなは家にあるパソコンで練習ができた。でも、自分の家にはパソコンがなくて練習ができない…。

そう思っていたら、母親がキーボードだけを買ってきてくれて、「本体ごと買うのは無理だけど、これで指の練習だけでも出来るでしょう」と。

その時、彼女は「うちってお金がないのかな」と気付いた、と。

 

…め、めっちゃいい話じゃないですか。何が悪いんだと言いたい。

本体は買えないけど、なんとか娘に練習させてあげたいっていう、お母さんの優しさ。それに触れて、娘は「うちってお金がないんだな」と悟って、「自分も頑張らないと!」と気持ちを新たにする。

これこそ、本来あるべき親子の姿だと私は思いました。

また、彼女の家ではエアコンが無いので、夏の暑い時期には首の後ろに保冷剤を当てて暑さをしのいでいるという場面もあり、それを観て、私は「大変だなぁ…」なんて感じたのだけれど、彼女は「それがつらいです」とか「暑くて勉強できません」なんていうマイナスな発言は一切していなかったんですよ。

ニコニコ笑いながら、保冷剤をハンカチにくるんで首の後ろにあてている姿をテレビで観て、「節約すればエアコンくらいつけられるはず」「こんなの貧困とは言えない」とか言っている人がいるようですが、彼女は、「この生活が大変だから助けて下さい」なんて言ってもいないし、そもそも、そんな風に思ってもいなかったでしょう。

パソコンを買わないことにしても、エアコンをつけないことにしても、それをさも「貧困家庭の大変さ」だと視聴者に感じさせるように仕向けたのは制作側の意図です。

だって、別に生活に困っていなくても節約のためにエアコンをつけないお家や、スマホで充分だという理由でパソコンを持っていないお家もたくさんありますよね。

この女子高生の家族側にしてみれば、「母子家庭ってこんな感じですよ」くらいの気持ちだったと思います。

「貧困です」なんて言ってもいないのに、勝手にそう主張したことにされて、プライベートを暴かれて、「こんなに贅沢してるじゃないか」と見ず知らずの人間に責められる。

こんなのどう考えても理不尽だし、社会が病んでいるとしか思えない。

貧困家庭と進学問題

そもそも『ニュース7』の特集は、「*貧困家庭の子どもは経済的な理由で希望の進学先を諦めざるを得ない状況がありますよ、だから社会全体で支援する仕組みが必要ですよ」という問題提起をするのが目的だったのだと思います。

(*ここでいう貧困家庭とは、世帯の年間所得が約122万円に満たない「相対的貧困」の家庭を指します。)

実際に、「この大学へ行きたい」「これを学びたい」と子どもが希望の進学先を見つけても、親が経済的に困窮していたり充分な蓄えのない場合には諦めなくてはいけません。奨学金制度もありますが、いずれ返済しなくてはいけないことを考えると、やはり親の経済力のあるなしが問題になってくると思います。

親の懐事情によって、進学先にあらゆる選択肢を提示してもらえる子どももいれば、せっかく目標をみつけても諦めなくてはいけない子どももいる。

こうした状況を少しずつでも改善して、「すべての子どもの未来をみんなで支えてあげましょう」という考えは、すごく共感できるものですよね。

女子高生の家庭も相対的貧困の状態であったため、進学に問題を抱える一つのケースとして取り上げられていただけなのです。

ですから、決して「貧困で苦しんでます」といった主張をしていたわけではなく、「好きなものが買えずにいつも我慢してます」なんて言ってもなかったんですよ。

それなのになぜ、映画に行ってたりアニメグッズを買っていることで番組内容が「捏造だった」と批判されるのか。まったく理解できません。

『ニュース7』の企画自体は良かったのに、どうしてこんなことになっちゃったのでしょうか…。

『母子家庭だから』という偏見

私も母子家庭で育ったのですが、子ども時代、「母子家庭だから」という偏見や差別はかなり受けました。

「母子家庭だから家にテレビが無いんだろう」

「母子家庭だから生活保護を受けてるんだろう」

わざわざ家に来て、「母子家庭の家の中がどんなもんなのか見せろ」と言う子どもまでいました。当時は母子家庭ってすごく少なかったですし、クラスの中でも私だけでした。だから、ただ単に珍しかったのかも知れませんが、「どんなもんか見せろ」って、頭おかしいのかと思いますよね。バカじゃないのかと。

私は、そういう子どもを見ていつも思ってたんです。

この子達はきっと、親が、「あの子の家は母子家庭だよ」「生活保護っていうのを受けてるんだよ」とか言ってるんだろうな。それで、家の中を偵察させて、晩ご飯の時に笑い話にしたりするのかな。クソみたいな親だな、最悪な家庭だな、と、思っていました。

「母子家庭なんだから貧乏だろう」と勝手に決めつけ、だから生活保護を受けていて、「それには自分たちの税金が使われてるんだぞ」と威張りたい人達。

実際には生活保護なんて受けてなかったし、母は朝から晩まで働き詰めだったわけですが、そういう姿を知っていながらひどい言葉を投げかけてくる人ってどういう神経なんでしょうか?謎ですねこれは。

逃げ場のない恐ろしさ

こうした偏見や差別はいつの時代でもあるわけですが、今はネットがあるので、簡単に素性をさらされてしまうというのが本当にやっかいなことだと思います。

今回批判された女子高生とそのご家族には心から同情します。

母子家庭ということで、男手のいないお家で不特定多数の人間に嫌がらせを受けるというのが、どれほど不安で心細いことか、考えてみれば分かることです。弱者への攻撃で自分自身のフラストレーションを解消しようとするのは本気でやめて欲しい。

NHKは、このご家族に対して引っ越し費用くらい負担してあげても良いんじゃないかと、個人的には考えています。