心のネジを巻く日記

発達障害児の子育てと日常を綴るブログです

失踪する少女たち。あるいは、2018年の長谷川泰子について

f:id:muhuhu:20180408130455j:plain

昨夜NHKを観ていたら、若者の失踪について特集していました。

なんでも、日本では年間約3万人の若者がある日突然失踪してしまうのだそうです。

大半は親が行方不明者届けを出した直後か1カ月以内に見つかるものの、2割くらいの若者は、そのまま行方知れずになっているとか。

番組では実際に失踪している若い女性数人にインタビューを行なったり、中学生を部屋に住まわせて「未成年者誘拐容疑」で逮捕され、執行猶予つきの有罪判決を受けた男性にインタビューを行なったり、親元から家出して行き場を無くしている若者の支援をしている団体の活動を紹介したりしていました。

失踪する若者の心理とは

番組に登場した失踪中の若者はいずれも女性だったため、女性に限った情報しか分からなかったのですが、彼女達の失踪理由は家族関係の不和によるものでした。

親からの期待や干渉が重すぎて息苦しくなった女性や、複雑な家庭環境に嫌気がさした女性など、「家にいるのが嫌だから家を飛び出した」という人ばかりだったのです。

その中の1人は「家を出たいと思ったことのない人が羨ましい」とも言っていました。

家の中が窮屈で苦しければ、家出をしたいと思うのは自然な流れでしょう。

私自身も19歳で家出したので、それについてはよく理解できます。

ただ、思うのは、家出をするにはそれなりの準備が必要です。まとまったお金、住む場所、仕事、この3つは最低限確保しておかなければ家出はできないはずなのです。

けれど、昨日の番組で紹介されていた家出少女達は、何の準備も無く思いつきで家を出てしまっていました。

SNSが家出のハードルを下げている

ある女性が「誰か泊めて下さい」と呼びかけると、数秒で、「泊めますよ!」「どこですか?」というリプがどんどん付いていきます。

そのほとんどは男性からで、家出をした女性たちはそうした呼びかけを行ない、泊めてくれる男性をさがしながら生活をしているのだそうです。

男性の目的は、もちろん性交です。

女性もそれを分かっていて呼びかけているのです。

インタビューを受けた女性全員が、泊めてくれた男性からの性被害を経験していましたし、中には暴力を受けたという女性もいました。

見ず知らずの男性の家に泊まりにいくことがどれほど危険か、たぶん、よく理解できていないのだなと感じました。

性交渉の間の一時だけ歯を食いしばっていれば、雨風のしのげる寝床が与えられ、食事にありつけることもある。男達は優しくて、自分の悩みに耳を傾けてくれているように、見えるから。

そこまでで思考がストップしてしまって、自分が取り返しのつかない過ちを犯していることに気付けていないのだと思います。

自分を売る店を探して廻るとは…

年頃の女の子の母親として、毎日、我が子やその友達と接していて感じるのは、『少女』という、1つの完成された芸術品の底知れぬ美しさです。

本当にそれは尊いもので、世界を浄化しているといっても良いと思う。

それはもちろん少年でも同じで、10代の少年少女から発せられる「目に見えない力」というのは、どれだけ大人が手に入れたくても手に入れられない崇高なもの。

だからこそ、なぜ安売りをして、自ら汚されにいってしまうのか…

本当に悲しい気持ちになってしまうのです。

降りくる悲しみを少しもうけとめないで、

安易で架空な有頂天を幸福と感じなし

自分を売る店を探して走り廻るとは、

なんと悲しく悲しいことだ……

中原中也の未発表詩「寒い夜の自画像2」の一節です。

この詩で中也は、自分のもとを去り小林秀雄と同棲を始めてもなお、他の男と遊び歩き奔放な生活を送っていた長谷川泰子さんに対して、「自分を売る店を探して走り廻るとは、なんと悲しく悲しいことだ…」と非難しています。

長谷川泰子さんの才能を認め、女優として成功することも願っていた中也は、自分の価値を貶めるようなふるまいをする泰子さんのことが許せなかったのです。

この中也の思いと同じようなものを、私は失踪する少女達に感じます。

人は生きていく上で「降りくる悲しみ」を受け止めなくてはいけない瞬間が必ずあります。それは1度だけではないし、何度でも何度でも繰り返されていくものです。

そこから逃げるために、自分を安売りして汚れを身にまとって生きていくなんて、あまりに悲しい。

家にいるよりはマシというほど家庭環境が劣悪ならば、助けてくれる仕組みはいくらでもありますから、まずは相談をしてもらいたいと思います。

『bondプロジェクト』さんは家出した少女を保護し、行政の福祉窓口につなぐ活動をされています。

twitter.com

大人に汚された少女が失うのは「人生」

長谷川泰子さんは自らの若い頃を「性に無頓着だった」と分析し、周囲も「泰子は不感症だった」と語っています。

だからこそ、自分を売り歩く行為を生活のためと割り切れたのかもしれません。

ただ、泰子さんは小林秀雄に捨てられたあと劇作家の山川幸世に犯され妊娠し、その後大変な人生を送っています。

中原中也の死後は「中也を裏切った悪女」として、熱狂的なファンから何度も命を狙われ、晩年はビルの清掃員として働きながら1人きりで寂しく人生の扉を閉じました。

長谷川泰子さんが生きていた時代は、2018年と全く違います。今ならいくらでも、軌道修正はできる。

失踪する少女達が、自分の美しさに気付いて、汚れた大人に関わることの愚かさに気付いてくれたら良いと思います。